STEM/STEAM教育の定義

2020年からプログラミング教育が必修化され、学校でも世間でもプログラミング教育へと注目が集まっています。
本記事では、プログラミング教育のさらに上位概念にあたる「STEM/STEAM教育」の定義にを確認したいと思います。

はじめに

STEM」とは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)の頭文字を合わせた言葉です。
近年では、さらにArt(芸術)を含めて「STEAM」という表現も一般的となりつつあります。

科学・技術・工学(・芸術)・数学の並びから考えると、「STEM/STEAM教育」=「理数教育」とも言い換えられるように思う人も多いかと思います。しかし、実際には、STEM/STEAM教育は理数教育とは異なる概念であるとされています。
以下では、複数のソースをもとに「STEM/STEAM教育」の定義について考えます。

定義

文部科学省による定義は以下の通りです。

Science, Technology, Engineering, Art, Mathematics 等の各教科での学習を実社会での課題解決に生かしていくための教科横断的な教育

引用元:「新しい時代の初等中等教育の在り方について(諮問)」(平成31年4月17日、中央教育審議会)

ここでは、「各教科での学習を実社会での課題解決に生かしていくための教科横断的な教育」とされています。
「教科横断的」とあることからも、単に「数学」「理科」「情報」だけではなく、文系も含めた教科横断的な授業・教育によって、単なる科目知識の習得に閉じることなく、実際に生じている課題の解決に活用できる力をはぐくむための教育、というとらえ方ができます。

また、教育再生実行会議にも定義がみられます。

STEAM 教育 (Science, Technology, Engineering, Art, Mathematics 等の各教科での学習を実社会での問題発見・解決にいかしていくための教科横断的な教育)

引用元:教育再生実行会議「技術の進展に応じた教育の革新、新時代に対応した高等学校改革について(第十一次提言)」(令和元年5月17日)

やや表現が違うものの、おおよそ同じ定義であることがわかるかと思います。

一方で、文部科学省など国の文書において、「STEM/STEAM教育」が明示的に打ち出されるようになったのは、
「Society 5.0 に向けた人材育成~ 社会が変わる、学びが変わる ~」(平成 30 年6月5日、Society 5.0 に向けた人材育成に係る大臣懇談会 新たな時代を豊かに生きる力の育成に関する省内タスクフォース)
が初めでです。
(この文書は、「公正に個別最適化された学び」「文理分断からの脱却」「EdTechとビッグデータの活用」など、2020年以降の文部科学省による教育改革の方向性を明確に打ち出す重要な政策文書と位置付けられます。)

この文書においては、明示的な定義はないものの、STEAMという単語が以下のように使われています。

(高等学校教育の文脈)
思考の基盤となる STEAM 教育を、すべての生徒に学ばせる必要がある。こうした中で、より多くの優れた STEAM 人材の卵を産みだし、将来、世界を牽引する研究者の輩出とともに、幅広い分野で新しい価値を提供できる数多くの人材の輩出につなげていくことが求められている。

(大学改革の文脈)
大学の学部名に関わらず、社会のニーズ及び国際トレンド等を背景に、今後多くの学生が必要とする STEAM やデザイン思考などの教育が十分に提供できるよう、大学による教育プログラムの見直しを促進する。具体的には、学生が共通的に学ぶリベラルアーツと学生が選択する人社系、STEAM 系、保健系等の専門分野について、学部を超えて提供される構造へと変える。この取組により、STEAM 系を専攻する AI のトップ人材や専門人材を育成するとともに、文理両方を学ぶことにより必要な AI に関する素養を身に付けた人社系等を専攻する人材を育成する。

引用元:文部科学省 Society5.0に向けた人材育成に係る大臣懇談会「Society 5.0 に向けた人材育成~ 社会が変わる、学びが変わる ~

以上を見ると、「STEAM」が、「理数系」「理工系」の言い換えのように使われており、以降の文書での定義とは明確に違うことがわかります。

さいごに

日本での定義の変遷と同じく、「STEM」「STEAM」は、単なる「理数教育」ととらえるのではなく、「教科横断的」に「課題解決力」を育む教育、ととらえるべきだと筆者も考えています。
プログラミングは、一義的には「情報」の授業の範疇であり、かつ「数学」とも密接に関連する分野ではありますが、実社会においてはプログラミングは問題解決のための「手法」「手段」の一つであり、プログラミングを使って何をするか、ということが重要になります。
そう考えると、学校教育でも「プログラミング」×「XX」という教育を行うことで、「プログラミングで異なる領域の課題解決につながる」という意識・感覚が根付いていくことが理想的ではないでしょうか。

タイトルとURLをコピーしました