大学ランキングの評価指標の比較

日本の学歴社会では、「大学ランキング」「偏差値ランキング」という言葉への関心が強く、何らかの大学ランキングが発表される度にニュースで取り上げられ、ネットでは多数の偏差値ランキングサイトがあふれているかと思います。
本記事では、多数の尺度で評価される大学についてのランキングを集め、どのような指標で大学が評価されているのかについて比較しました。

なお、以下の記事では、世界の大学ランキングを集め、その概要を一覧にしています。興味のある方は合わせてご覧ください。

Times Higher Education「THE世界大学ランキング(World University Rankings)」

引用元:Times Higher Education, “World University Rankings”

本ランキングは、イギリスの高等教育専門週刊誌『タイムズ・ハイアー・エデュケーション(THE)』が2004年から毎年秋に公表しています。2004年から2009年までは、Quacquarelli Symondsと共同でランキングを作っていましたが、2010年からは「トムソン・ロイター社 (Thomson Reuters :TR)」と共同でランキングを作り始め、今に至ります。

評価指標は以下の通りです。

  1. 教育(Teaching):30%
    • 評判調査(Reputation survey):15%
    • 職員と学生の比率(Staff-to-student ratio):4.5%
    • 博士号と学士号の比率(Doctorates-awarded-to-academic-staff ratio):2.25%
    • 博士号取得者と教員の比率(Doctorates-awarded-to-academic-staff ratio):6%
    • 機関収入(Institutional income):2.25%
  2. 研究(Research):30%
    • 評判調査(Reputation survey):18%
    • 研究収入(Research income):6%
    • 研究生産性(Research productivity):6%
  3. 論文被引用(Citations):30%
  4. 国際性(International outlook):7.5%
    • 留学生比率(Proportion of international students):2.5%
    • 国際スタッフの比率(Proportion of international staff):2.5%
    • 国際連携(International collaboration):2.5%
  5. 産業界からの収入(Industry income):2.5%


このランキングの特徴として、「教育」「研究」をバランスよく評価対象としている点が挙げられます。特に教育については、5つの指標を設けるなど、世界の他のランキングと比較して非常に精緻な評価となっています。
加えて、「研究収入」「産業界からの収入」など、研究活動を通して得ている大学としての収入を評価指標に挙げている点も特徴的です。大学の財政的自立を重要視したメソドロジーであり、言い換えると社会的な還元性の高い研究を評価しているとも考えられます。

評価指標の詳細は参考リンクよりご確認下さい。

【参考】
Times Higher Education, “World University Rankings”
Times Higher Education, “THE World University Rankings 2021: methodology”

QS Quacquarelli Symonds「QU世界大学ランキング(QS World University Rankings)」

引用元:QS Quacquarelli Symonds, “QS World University Rankings”

イギリスの大学評価機関であるQS社は、かつては上述のTimes Higher Education社と共同で世界大学ランキングを発表していましたが、2010年より、それぞれ独自に別々のランキングとして公表するようになっています。
最新のランキングとなる2021年度には、世界80地域の1000大学についてのランキングを発表しています。

評価指標は以下の通りです。

  1. 学術的評判(Academic Reputation):40%
  2. 雇用主の評判(Employer Reputation):10%
  3. 教職員/学生比率(Faculty/Student Ratio):20%
  4. 教員あたり引用数(Citations per faculty):20%
  5. 国際的な教職員比率(International Faculty Ratio):5%
  6. 留学生比率(International Student Ratio):5%

本ランキングの特徴は、「雇用主の評判(Employer Reputation)」を評価指標に取り入れている点です。ホームページでは、大学での教育を労働市場に出るための準備とし、大学がその準備をどの程度成功させているかを評価することがランキングにおいて不可欠であると記載しています。
独自の雇用主調査(5万件の回答)に基づいて当該指標の評価を行っており、この指標に重きを置いていることがうかがえます。

一方で、「教職員/学生比率(Faculty/Student Ratio)」はあるものの、教育に対しての直接的な評価指標は設けられていません。また、学術的評判と引用比率で評価全体の計60%を占めていることから、全体としては研究に重きを置いたメソドロジーとなっていると言えます

評価指標の詳細は参考リンクよりご確認下さい。

【参考】
Quacquarelli Symonds, “QS World University Rankings”
Quacquarelli Symonds, “Understanding the Methodology: QS World University Rankings”

Shanghai Ranking Consultancy「世界大学学術ランキング(Academic Ranking of World Universities)」

このランキングは、2003年6月に中国の上海交通大学の教育大学院(旧高等教育研究所)によって最初に公表され、以降は毎年公表されています。2009年以降は、現在の世界大学学術ランキングとして中国上海の評価組織であるShanghai Ranking Consultancyにより公表されています。

  1. 教育の質(Quality of Education):10%
    • ノーベル賞・フィールド賞受賞者の輩出(Alumni of an institution winning Nobel Prizes and Fields Medals)
  2. 研究の質(Quality of Faculty):40%
    • ノーベル賞・フィールド賞受賞者の在籍(Staff of an institution winning Nobel Prizes and Fields Medals Award):20%
    • 高被引用論文著者(Highly Cited Researchers):20%
  3. 研究成果(Research Output):40%
    • Nature誌・Science誌での掲載論文数(Papers published in Nature and Science):20%
    • Science Citation Index-expanded と Social Science Citation Index で索引付けされた論文(Papers indexed in Science Citation Index-Expanded and Social Science Citation Index):20%
  4. 一人当たりの業績(Per Capita Performance):10%
    • Per capita academic performance of an institution:10%

本ランキングの特徴は、その名の通り、「学術」面での業績に特化したメソドロジーとなっています。
「教育の質」とされる指標においても、ノーベル賞・フィールド賞といった世界最高峰の学術的Awardの受賞者の輩出のみに焦点が当てられており、如何に学術・研究面でのインパクトを大学として残しているか、という点が重要視されています。

評価指標の詳細は参考リンクよりご確認下さい。

【参考】
ShanghaiRanking Consultancy, “Home”
ShanghaiRanking Consultancy, “ShanghaiRanking’s Academic Ranking of World Universities Methodology 2022”

さいごに

世界には多様な大学ランキングがありますが、そのランキングを参照する上で「何を評価指標としているか」ということを理解せずには、その後の教育・研究活動の改善に活かすことは難しいと考えられます。
大学や行政の立場としては、単にランキング結果に一喜一憂するだけではなく、何が評価され、何が評価されていないのかを把握し、適切な改善策を見出していくことが、大学ランキングの適切な利用の仕方といえるのではないでしょうか。
更には、各評価機関によるそれぞれのメソドロジーがある中で、どのメソドロジーの中で評価される大学を目指すのか、という点も、大学内での施策、あるいは国家的施策を通した大学教育・研究の改善においても重要となると考えられます。

コメント

  1. […] […]

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