不動産(戸建て・マンション等)の売買・仲介・管理・賃貸などを行う不動産業界(不動産事業者)は、業法による規制が多く、業務を行うために必要な国家資格が多数設定されています。
本記事では、不動産業界・事業者で働く方や不動産業界・事業者への就職を目指す方におすすめの資格を一覧にして紹介します。不動産業界でのスキルアップ・キャリアアップを考えている方は、ぜひ参考にしてください。
不動産系の資格一覧
資格/検定名称 | 種類 | 年間試験 回数 | 合格者数 ※1 | 合格率 ※1 |
---|---|---|---|---|
宅地建物取引士 | 国家 資格 | 1回 ※2 | 41,471人 | 17.7% |
不動産鑑定士 | 国家 資格 | 1回 | 621人(短答式) 135人(論文式) | 36.3%(短答式) 16.7%(論文式) |
マンション管理士 | 国家 資格 | 1回 | 1,238人 | 9.9% |
管理業務主任者 | 国家 資格 | 1回 | 3,203人 | 19.4% |
賃貸不動産経営管理士 | 国家 資格 | 1回 | 10,240人 | 31.5% |
土地家屋調査士 | 国家 資格 | 1回 | 404人 | 10.5% |
※1:脚注に記載のない限り、合格者数及び合格率は、2021年度実施回の結果を記載
※2:コロナ対策の都合により、2020年度より2回に分けて実施(受験は一人につき年1回)。合格者数・合格率は、2021年度実施回の2回分を合わせて算出
宅地建物取引士
宅地建物取引士とは、宅地・建物の購入者等の利益の保護や円滑な宅地・建物の流通のため、宅地建物取引業者(主に不動産会社)が行う宅地又は建物の売買・交換・貸借に対して法律上定められた事務(重要事項の説明等)を行う、宅地・建物の取引の専門家です。
「宅地建物取引業法」に規定されている国家資格となります。
宅地建物取引業者は、規模に応じた宅地建物取引士を置かなければならないとされており、宅地建物取引士はいわゆる設置義務資格にあたります。
宅地建物取引業法では、宅地建物取引士が行う必要がある業務として以下が定められています。
- 重要事項の説明
- 重要事項説明書への記名・押印
- 契約内容記載書面への記名・押印
宅地建物取引士試験は年1回行われ、四肢択一式による筆記試験(50問)となっています。
合格基準点は年によって異なり、おおよそ30点~40点の間に基準点が設定されます。
また、宅地建物取引業に従事している場合は登録講習を事前に受講することができ、終了試験に合格すれば、本試験50問から5問が免除されます。
試験の出題範囲は以下の通りです。
- 土地の形質、地積、地目及び種別並びに建物の形質、構造及び種別に関すること。
- 土地及び建物についての権利及び権利の変動に関する法令に関すること。
- 土地及び建物についての法令上の制限に関すること。
- 宅地及び建物についての税に関する法令に関すること。
- 宅地及び建物の需給に関する法令及び実務に関すること。
- 宅地及び建物の価格の評定に関すること。
- 宅地建物取引業法及び同法の関係法令に関すること。
【参考】
不動産適正取引推進機構「宅建試験の概要」
不動産適正取引推進機構「宅建試験」
e-gov法令検索「宅地建物取引業法」
不動産鑑定士
不動産鑑定士とは、その名の通り、不動産の経済価値を判定・評価する専門家です。
「不動産の鑑定評価に関する法律」に規定されている国家資格であり、その中でも、独占業務を持つ業務独占資格となります。
不動産鑑定士の主な業務は以下の通りです。特に「不動産の鑑定評価」は不動産鑑定士の独占業務となります。
- 不動産の鑑定評価
- 不動産の価値に関する調査・分析
- 不動産利用に関するコンサルティング(不動産の利用、取引若しくは投資に関する相談対応)
不動産鑑定士試験は、短答式試験と論文式試験の2段階となっており、短答式試験の合格者が論文式試験を受けることができます。
それぞれの試験科目は以下の通りです。
- 短答式試験:2科目
- 不動産に関する行政法規
- 不動産の鑑定評価に関する理論
- 論文式試験:4科目
- 民法
- 経済学
- 会計学
- 不動産の鑑定評価に関する理論
不動産鑑定士試験に合格後、実務修習を受け、国土交通大臣からの確認を得て、不動産鑑定士として登録されます。
【参考】
国土交通省「不動産鑑定士試験」
日本不動産鑑定士協会連合会「不動産鑑定士とは?」
e-gov法令検索「不動産の鑑定評価に関する法律」
マンション管理士
マンション管理士とは、マンションの管理や管理組合の運営に関し、マンションの管理者や区分所有者の相談に応じ、助言、指導等の援助を行うことを業務とする専門家です。
「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」に規定されている国家資格であり、名称独占資格になります。
マンション管理士の主な業務内容は以下の通りです。ただし、いずれもマンション管理士の独占業務ではありません。
- マンションの管理規約および使用細則等の策定・改定
- 大規模修繕計画の策定・見直し
- 区分所有者間のトラブルへの対処
- マンション管理に関する住民相談受付
マンション管理士試験は年1回行われ、四肢択一式による筆記試験(50問)となっています。
合格基準点は年によって変動しており、34~38点の間で推移しています。
なお、管理業務主任者試験に合格している方は、試験50問のうち5問が免除されます。
試験の出題範囲は以下の通りです。
- マンションの管理に関する法令及び実務に関すること
- 管理組合の運営の円滑化に関すること
- マンションの建物及び附属施設の構造及び設備に関すること
- マンションの管理の適正化の推進に関する法律に関すること
マンション管理士試験に合格し、国土交通大臣の登録を受けることで、マンション管理士になることができます。
【参考】
マンション管理センター「マンション管理士試験」
国土交通省「マンション管理士になるには」
e-gov法令検索「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」
管理業務主任者
管理業務主任者とは、マンション管理業者が管理組合等に対して管理委託契約に関する重要事項の説明や管理事務報告を行うにあたって設置する必要のある役割のことです。
「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」に規定されている国家資格であり、マンション管理業を営む際に設置が義務付けられる設置義務資格となります。
管理業務主任者の主な業務は以下の通りです。
- マンション管理事務の委託契約に関する重要事項説明および重要事項説明書への記名
- マンションの管理委託契約書への記名
- マンション管理事務の報告
管理業務主任者となるには、管理業務主任者試験に合格し、管理業務主任者として登録する必要があります。また、実務経験が2年未満の場合は、試験合格後に実務講習を受ける必要があります。
管理業務主任者試験は年1回行われ、四肢択一式による筆記試験(50問)となっています。
合格基準点は年によって変動しており、33~38点の間で推移しています。
なお、マンション管理士試験に合格している方は、試験50問のうち5問が免除されます。
試験の出題範囲は以下の通りです。
- 管理事務の委託契約に関すること
- 管理組合の会計の収入及び支出の調定並びに出納に関すること
- 建物及び附属設備の維持又は修繕に関する企画又は実施の調整に関すること
- マンションの管理の適正化の推進に関する法律に関すること
- 1.から4.に掲げるもののほか、管理事務の実施に関すること
【参考】
マンション管理業協会「管理業務主任者とは」
マンション管理業協会「管理業務主任者試験」
e-Gov法令検索「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」
賃貸不動産経営管理士
賃貸不動産経営管理士は、賃貸住宅管理に関する専門家です。賃貸不動産の管理を適切に行うことを通じて、賃貸不動産所有者の資産の有効活用、不動産賃借人等の安全・安心の確保といった役割を担います。
「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」では、賃貸住宅管理業務を行う上で「業務管理者」を設置することが義務付けられていますが、「業務管理者」の要件の一つが賃貸不動産経営管理士であることとされています。
賃貸不動産経営管理士の資格自体は2007年に創設されましたが、その当時は民間資格でした。しかし、2021年の法改正を通して、上記の通り業務管理者の要件の一つとなり、国家資格に位置付けられることとなりました。
※なお、2020年度までに賃貸不動産経営管理士試験に合格し、2022年6月までに登録を受けた者については、業務管理者となる要件を満たすために、追加で「移行講習」を受講する必要があります。
賃貸不動産経営管理士になるには、賃貸不動産経営管理士試験に合格し、賃貸不動産経営管理士として登録する必要があります。また、実務経験が2年未満の場合は、試験合格後に実務講習を受ける必要があります。
賃貸不動産経営管理士試験は年1回行われ、四肢択一式による筆記試験(50問)となっています。
合格基準点は年によって異なり、国家資格となって以降の2年間は、それぞれ34点(2020年度)、40点(2021年度)と設定されています。
また、賃貸不動産経営管理士講習を事前に修了すれば、本試験50問のうち5問が免除されます。
試験の出題範囲は以下の通りです。
- 管理受託契約に関する事項
- 管理業務として行う賃貸住宅の維持保全に関する事項
- 家賃、敷金、共益費その他の金銭の管理に関する事項
- 賃貸住宅の賃貸借に関する事項
- 法に関する事項
- その他、管理業務その他の賃貸住宅の管理の実務に関する事項
【参考】
賃貸不動産経営管理士協議会「賃貸不動産経営管理士とは」
国土交通省「賃貸住宅管理業法ポータルサイト 業務管理者について」
e-Gov法令検索「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」
土地家屋調査士
土地家屋調査士とは、不動産の表示に関する登記及び土地の筆界を明らかにする業務の専門家であり、不動産に関する権利を明確化することが主な役割となります。
「土地家屋調査士法」に規定されている国家資格であり、その中でも、独占業務を持つ業務独占資格となります。
土地家屋調査士の業務は以下の通りです。
- 不動産の表示に関する登記について必要な土地又は家屋に関する調査又は測量
- 不動産の表示に関する登記の申請手続又はこれに関する審査請求の手続についての代理
- 筆界特定の手続についての代理
- 土地の筆界が明らかでないことを原因とする民事に関する紛争に係る民間紛争解決手続についての代理
- 上記の業務に関する相談
試験は、筆記試験と口述試験に分かれており、筆記試験の合格者が口述試験を受けることができます。
筆記試験については、午前の部と午後の部に分かれています。それぞれの試験の方法・配点は以下の通りです。
- 午前の部
- 多肢択一式:10問(60点満点)
- 記述式:1問(40点満点)
- 午後の部
- 多肢択一式:20問(50点満点)
- 記述式:2問(50点満点)
筆記試験の内容は以下の通りです。
1,2,3,5が午前の部、4が午後の部となります。
- 民法に関する知識
- 登記の申請手続及び審査請求の手続に関する知識
- 筆界に関する知識
- 土地及び家屋の調査及び測量に関する知識及び技能であって、次に掲げる事項
- 土地家屋調査士法第3条第1項第1号から第6号までに規定する業務を行うのに必要な測量
- 作図
- その他土地家屋調査士法第3条第1項第1号から第6号までに規定する業務を行うのに必要な知識及び能力
【参考】
法務省「土地家屋調査士試験」
日本土地家屋調査士会連合会「土地家屋調査士について」
e-gov法令検索「土地家屋調査士法」