国家資格の定義と分類 ―「業務独占資格」「名称独占資格」「設置義務資格」―

世の中には様々な国家資格がありますが、資格を取得・保有することでどのような意味があるか(≒どのようなメリットを受けられるか)は、資格の種類によって異なります。
例えば、ある業務を独占的に行える資格もあれば、ある資格を保有していることを対外的に提示できる資格など、資格の持つ効力・性質・メリットは様々です。

本記事では、国家資格を取得・保有する意味やメリットを明確にするためにも、「業務独占資格」「名称独占資格」など、法律で設けられている規制の種類に応じて国家資格を分類・説明します。

本記事のまとめ
  • 国家資格は、法律で設けられている規制の種類に応じて、以下の通り分類できます。
    • 業務独占資格有資格者以外が携わることを禁じられている業務を独占的に行うことができる資格
    • 名称独占資格有資格者以外はその名称を名乗ることを認められていない資格
    • 設置義務資格必置資格):特定の事業を行う際に法律で設置が義務づけられている資格
    • 技能検定技能の習得レベルを評価する国家検定であり、合格することで「技能士」と名乗ることができる

はじめに

本記事では、法律で設けられている規制の種類に応じて、国家資格を以下の4つに分類し、各資格の意味や効力を具体的に説明していきます。

  1. 業務独占資格
  2. 名称独占資格
  3. 設置義務資格(必置資格)
  4. 技能検定

なお、本記事では、文部科学省のWebサイト(以下リンク参照)に掲載されている情報をベースとしています。

文部科学省「国家資格の概要について」

業務独占資格

業務独占資格」とは、「有資格者以外が携わることを禁じられている業務を独占的に行うことができる資格」を指します。
業務独占資格の場合、ある特定の業務についてはその資格保有者のみしか行ってはいけないことが、法律上規定されています。

例えば、有名な業務独占資格である「弁護士」は、「弁護士法」において、以下の規定があります。

(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
第七十二条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

引用元:e-Gov 法令検索「弁護士法」

上記のように、「弁護士又は弁護士法人でない者は、・・・を業とすることができない。」といった形で、ある業務については資格がなければできないことが法律上で規定されています。

なお、業務独占資格を有していなければできない業務を、一般に「独占業務」といいます

また、独占業務を有資格者以外が行った場合、原則として罰則が科されます。
弁護士法においても、上記の独占業務を「弁護士又は弁護士法人でない者」が行った場合(=第72条に違反した場合)、「二年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。」と規定されています。

名称独占資格

名称独占資格」とは、「有資格者以外はその名称を名乗ることを認められていない資格」を指します。
「栄養士」「保育士」などの特定の資格・職業の名称について、その資格を有している人以外は名乗ることができないということになります。

例えば、名称独占資格である「栄養士」は、「栄養士法」に以下の規定があります。

第六条
栄養士でなければ、栄養士又はこれに類似する名称を用いて第一条第一項に規定する業務を行つてはならない。

引用元:e-Gov 法令検索「栄養士法」

上記のように、「・・・名称を用いて・・・業務を行ってはならない。」あるいは「・・・でない者は、・・・名称を用いてはならない。」といった形で、ある資格・職業の名称を用いて業務を行ってはならないということが、法律上規定されています。

なお、「業務独占資格」は「名称独占資格」でもある場合がほとんどです。上述の弁護士についても、名称独占に関する規定があります。

第七十四条 弁護士又は弁護士法人でない者は、弁護士又は法律事務所の標示又は記載をしてはならない
2 弁護士又は弁護士法人でない者は、利益を得る目的で、法律相談その他法律事務を取り扱う旨の標示又は記載をしてはならない。
3 弁護士法人でない者は、その名称中に弁護士法人又はこれに類似する名称を用いてはならない。

引用元:e-Gov 法令検索「弁護士法」

逆に、「名称独占資格」ではあるが「業務独占資格」ではない資格の場合、その資格・職業の名称を使うことはできますが、資格を活かして独占的に実施できる業務はありません

例えば、「栄養士」は、「栄養の指導に従事することを業とする」資格・職業として法律上定められていますが、栄養士の資格を持たない人でも、栄養の指導に従事することは可能です(ただし、栄養士の資格を持たない場合には、「栄養士」を名乗ることはできません)。

設置義務資格(必置資格)

設置義務資格」(「必置資格」と表現する場合もあります。)は、「特定の事業を行う際に法律で設置が義務づけられている資格」を指します。
ある事業を行うために特定の資格を有している人を選任・設置することが法律上規定されている場合、当該資格を「設置義務資格」といいます。

例えば、設置義務資格である「衛生管理者」は、「労働安全衛生法」に以下の規定があります。

第十二条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、都道府県労働局長の免許を受けた者その他厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該事業場の業務の区分に応じて、衛生管理者を選任し、その者に第十条第一項各号の業務(第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第一項各号の措置に該当するものを除く。)のうち衛生に係る技術的事項を管理させなければならない。

引用元:e-Gov 法令検索「労働安全衛生法」

同じく設置義務資格である「食品衛生管理者」は、「食品衛生法」に以下の規定があります。

第四十八条 乳製品、第十二条の規定により厚生労働大臣が定めた添加物その他製造又は加工の過程において特に衛生上の考慮を必要とする食品又は添加物であつて政令で定めるものの製造又は加工を行う営業者は、その製造又は加工を衛生的に管理させるため、その施設ごとに、専任の食品衛生管理者を置かなければならない。ただし、営業者が自ら食品衛生管理者となつて管理する施設については、この限りでない。

引用元:e-Gov 法令検索「食品衛生法」

上記のように、「・・・を選任(しなければならない)」もしくは「・・を置かなければならない」等の形で、有資格者を選任・設置しなければならないことが法律上規定されています。

なお、「設置義務資格」は「業務独占資格」と意味的に類似していますが、両者には以下のような違いがあります。

  • 業務独占資格:(主に個人が)特定の業務を行うために、業務独占資格を保有しなければならない
  • 設置義務資格:企業・事業者が)特定の事業を行うために、設置義務資格を保有した人を選任・設置しなければならない

「業務独占資格」は、個人(※)が、特定の業務を行うために必要となる資格となります。
※独占業務を行うことができる主体として、有資格者が設立した法人を含めている場合もあります。
一方で、「設置義務資格」は、ある企業・事業者等(≒複数の個人からなる組織)が、特定の事業を行うために、その有資格者を組織内で選任・設置することが求められています。

例えば、「衛生管理者」は、「常時50人以上の労働者を使用する事業者」に設置義務が課されています。
「食品衛生管理者」は、「製造又は加工の過程において特に衛生上の考慮を必要とする食品又は添加物であって、食品衛生法施行令で定めるものの製造又は加工を行う営業者」に設置義務が課されています。

また、「設置義務資格(必置資格)」は、ほとんどの場合、複数の資格要件が定められており、いずれかの要件を満たしていれば、有資格者として選任・設置することができます

例えば、「弁護士」になるには「弁護士」の資格が必要ですが、「食品衛生管理者」になるには、「食品衛生管理者」という資格を取るというよりは、「食品衛生管理者」になるための要件のいずれかを満たすことが求められます。具体的には、以下の資格要件があります。

  1. 医師、歯科医師、薬剤師、獣医師
  2. 学校教育法に基づく大学、旧大学令に基づく大学又は旧専門学校令に基づく専門学校において医学、歯学、薬学、獣医学、畜産学、水産学、農芸化学の課程を修めて卒業した者(関連通知)
  3. 都道府県知事の登録を受けた食品衛生管理者の養成施設において所定の課程を修了した者
  4. 学校教育法に基づく高等学校若しくは中等教育学校若しくは旧中等学校令に基づく中等学校を卒業した者又は厚生労働省令の定めるところによりこれらの者と同等以上の学力があると認められる者で、食品衛生管理者を置かなければならない製造業又は加工業において食品又は添加物の製造又は加工の衛生管理の業務に3年以上従事し、かつ、都道府県知事の登録を受けた講習会の課程を修了した者

上記の通り、医師や歯科医師といった他の資格を保有していることが要件として定められているほか、3.のような、他の資格を保有していない場合に「食品衛生管理者」になるための要件も定められています。

技能検定

技能検定(制度)」とは、「職業能力開発促進法」に規定されている「技能検定」のことを指しています。働くうえで身につける、または必要とされる技能の習得レベルを評価する国家検定制度で、全部で130職種(※)の試験があります。
試験に合格すると合格証書が交付され、「技能士」と名乗ることができます

※技能検定の一覧は、以下リンクよりご確認ください。
厚生労働省「技能検定制度について」

以下の職業能力開発促進法の規定が根拠となっています。

第四十四条 技能検定は、厚生労働大臣が、厚生労働省令で定める職種(以下この条において「検定職種」という。)ごとに、厚生労働省令で定める等級に区分して行う。ただし、検定職種のうち、等級に区分することが適当でない職種として厚生労働省令で定めるものについては、等級に区分しないで行うことができる。

引用元:e-Gov 法令検索「職業能力開発促進法」

技能検定の合格者は、「技能士」を称することができ、合格者以外はその名称を用いることはできません。その点は「名称独占資格」と同じであるといえます。
微細な違いとしては、技能検定の場合、そのレベルに応じて等級が「特級」「一級」「二級」「三級」「基礎級」と定められており、合格した職種に加え、その等級を示す必要があります

第五十条 技能検定に合格した者は、技能士と称することができる。
2 技能検定に合格した者は、前項の規定により技能士と称するときは、その合格した技能検定に係る職種及び等級(当該技能検定が等級に区分しないで行われたものである場合にあつては、職種)を表示してするものとし、合格していない技能検定に係る職種又は等級を表示してはならない。
3 厚生労働大臣は、技能士が前項の規定に違反して合格していない技能検定の職種又は等級を表示した場合には、二年以内の期間を定めて技能士の名称の使用の停止を命ずることができる。
4 技能士でない者は、技能士という名称を用いてはならない。

引用元:e-Gov 法令検索「職業能力開発促進法」

「技能検定」に関するその他詳細については、以下の厚生労働省Webサイトをご参照ください。
厚生労働省「技能検定制度について」

さいごに

本記事では、法律で設けられている規制の種類に応じて、国家資格が「業務独占資格」「名称独占資格」「設置義務資格」「技能検定」に分類・整理されることを紹介しました。

一方、本記事では、どの資格類型が最も有効である/取得すべきである、ということを明確にする意図はありません。実際に、資格の有効性は、この分類だけでは語ることができないと考えています。

国家資格といっても、資格によってその効力が違うため、自分が目指そうとしている資格はどの分類に該当するかを理解した上で、自らのキャリアを積む上でどのように役立てることができるのか、あるいは目指すキャリアにおいてどの程度必要であるのか、ということを、自ら考えるきっかけとなれば幸いです。

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