「国際的な仕事に就きたい!」と考えている方の中には、「国際資格」の取得を目指している方も多いのではないでしょうか。
資格には、国際的に通用性のあるものや国際関係の仕事に関するものなど、「国際資格」といわれるものが多数あります。
一方で、国際資格の意味やその分類については明確でなく、同じ国際資格に分類されていたとしても、その意味するところが大きく異なる場合もあります。
本記事では、そのような「国際資格」の定義と種類について確認したいと思います。
はじめに
「国際資格」といっても、その意味は多義的であり、正式な定義もありません。
「国際資格」を名乗る資格でも、その意味や効力が全く異なるものもあります。
そこで、本記事では、「国際資格」と呼ばれる資格を以下の5つに分類・整理しました。
国際資格の定義と分類
公的な国際機関が認定を行う資格
国際連合をはじめとして、複数国間で構成される公的な国際機関が世界に多数あります。そのような国際機関が主体となって認定を行う資格は、国際資格に分類されます。
この分類に当てはまる資格は、基本的には当該国際機関の加盟国の間で通用性があります。
国際機関が認める資格であり、まさにイメージ通りの「国際資格」であるといえる一方で、日本国内で取得できるものは非常に限定的です。
該当する資格の例は以下の通りです。
- APECエンジニア:APECエンジニア相互承認プロジェクトに基づき、有能な技術者が国境を越えて自由に活動できるようにするために創設された制度です。APEC加盟国のうち15か国で通用性があります。
公益財団法人日本技術士会「APECエンジニア」
国際公法(条約)に定められている資格
「国際公法(条約)」とは、二国または複数の国家間の合意であり、締結した国家間で効力を有しています(日本では、法律より条約の方が上位法規にあたるとされています)。このような国際公法(条約)上で定められている資格も、「国際資格」とみなされます。
この分類に当てはまる資格は、規定されている条約の締結国間で有効です。
前述の資格と同様、国家間で合意されている公的な資格という意味で、まさに国際的な資格といえますが、同様にその種類は非常に限定的です。
該当する資格の例は以下の通りです。
- 国際運転免許証:道路交通に関する条約 (Convention on Road Traffic) に基づいて発行される免許です。本免許を持っていれば、上記条約に締結している国家間で車を運転することができます。
警視庁「外国免許・国外運転免許証関係」
複数国に拠点を持つ団体が認定する民間資格
複数国に拠点を持つ団体が、複数の国で試験を実施・認定する民間資格も、国際資格の一つとみなされています。
この分類に当てはまる資格は、上述の2つの分類とは異なり、いわゆる民間資格に分類されます。そのため、ある特定の職業に就くために「必須」である、ということはありません。
しかし、非常に認知度の高い資格も多数あり、特定の職業に就職する際に重要視される、もしくは採用時に企業側から求められる資格も多いです。
資格の種類も多岐にわたります。
MOSに代表されるような、特定の企業の製品・プロダクトに関連する資格はこの分離に当てはまります。
また、TOEICやTOEFLなどの英語系の検定も、この分類に当てはまります。
そのほか、該当する資格の例は以下の通りです(ほんの一例であり、下記以外にも多数の資格が該当します)。
- 公認内部監査人:組織体の内部監査についての知識・技能を証明することを目的とする資格であり、アメリカに本部があるThe Institute of Internal Auditors(IIA、内部監査人協会)が主催・認定しています。
一般社団法人 日本内部監査協会「公認内部監査人」 - Financial Risk Manager (FRM) :アメリカに本部を置く GARP (Global Association of Risk Professionals) が認定する、金融リスクプロフェッショナルの資格となります。
Global Association of Risk Professionals “FRM Programs and Exams” - 国際細胞検査士:国際細胞学会(International Academy of Cytology)が認定する細胞検査士の国際的な資格です。
The International Academy of Cytology “Home”
ある特定の外国内で通用する資格
日本の国内に様々な資格があるように、他の国でも、その国の中だけで通用する資格が多数あります。そのような、日本以外の特定の国の中だけで通用する資格を、国際資格と呼ぶ場合があります。
その国の中でしか効力を有さないため、狭義の「国際」資格には当てはまらないとも考えられます。
一方で、士業系の資格をはじめとする業務独占資格の中には、世界的に活躍の場があるグローバル企業や、国家をまたいで業務を担う国際系の事務所などで重宝されるものあります。
例えば、日本で「国際弁護士」と呼ばれている方は、ニューヨーク州やカリフォルニア州などをはじめとする他国・州の弁護士資格を持っており、いわゆる国際法律事務所で働いている方が多いです。
一方で、「国際弁護士」と呼ばれているからといって、全世界的に活動できるわけではなく、実態としては弁護士資格を持っている国内・州内でのみしか弁護士として活動できません。
その他、該当する資格の例は以下の通りです。
- U. S. Certified Public Accountant(USCPA、米国公認会計士):アメリカ各州で認定する公認会計士の資格です。
National Association of State Boards of Accountancy ”CPA Exam”
国際関係の職業で活用できる日本国内の資格
資格としては日本国内でしか認定されてはおらず、外国での通用性はないものの、国際関係の職業に関する資格についても「国際資格」と呼ばれています。
この分類に当てはまる資格は、実質的には国内資格と同じく、国内でしかその通用性はありません。ただし、特定の職業に就くためには必須となる資格や、日本国内での知名度が高く、国際関係の仕事に就く際に非常に有効に働く資格もあります。
該当する資格の例は以下の通りです。
- 通関士:物品の輸出入に必要な書類の作成や手続きを代行することを主な業務とする日本の国家資格です。主に通関業者に勤務し、貿易関係の仕事に携わることとなります。
税関「通関士試験」 - 国際会計検定(BATIC):英語での会計処理や、国際財務報告基準(IFRS)に関する知識など国際的な会計基準の理解度を計る検定です。東京商工会議所が主催する日本の公的資格となります。
東京商工会議所「国際会計検定」
おわりに
以上、本記事では、「国際資格」を5つに分類し、その定義や具体例を確認しました。
国際的な資格は、その詳細について、日本語で詳しく説明されていない場合が多いです。
もし何らかの国際資格を取得しようとする場合には、名称に安易にとらわれることなく、当該資格の試験や認定を行う団体等のホームページから、その資格の効力について詳しく確認することが重要です。
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